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クリスマスの前に
12月24日の昼間。
魔法学校では年に一度の大掃除が行われている。
杖を使ってお掃除していいのは4年生以上と決まっている。
1年生から3年生は、杖の魔法が上手な子もまだちゃんと使いこなせない子もいるので、不公平にならないように全員がマヌール(人間族)と同じ様に手作業で大掃除をする。
お掃除の範囲は勿論4年生以上が教室やグラウンドなど、共用部分を受け持ってくれる。
なんと言っても魔法でするとあっという間に綺麗になってしまう。
杖を一振りすれば一年間の埃や汚れもあっという間にピカピカだ。
1年生から3年生は自分たちが使っている部屋と、寮の共用部分のリビングの掃除をしなければならない。
うっかり魔法を使う低学年の生徒がいると上級生のようにピカピカにはならず、びしょびしょになったり、固まった埃が落ちて来たりと却って手間がかかることになるので、3年生が下級生を見張りつつ頑張って手作業で大掃除をするのだ。
それにしても一年間でこんなに汚くなるものかと思うほどの汚れやほこりが部屋の隅や寮のリビングには溜まっている。
まずははたきで上の棚や家具の埃を払い、床はしっかりとお掃除用の箒で隅から隅まで掃く。
埃を取った後はバケツに水を汲んで雑巾で綺麗に拭きピカピカにするのだ。
集めた埃は散らさないように大きな袋に入れてゴミ捨て場まで歩いて持っていく。
そう、この日ばかりは箒に乗ることも許されない。大勢の先輩が広い範囲で綺麗にする魔法を使っているのでうっかり巻き込まれて埃と一緒に綺麗にされてしまい行方不明になってしまううっかりな間違えが起るからだ。勿論先生たちがすぐに行方を調べ、行方不明になったいう事を聞かなかった低学年の生徒を助けるのだがこってりと油を搾られる。
大掃除の日はクリスマス休暇の前の晩となり、クリスマスイブの飾りつけやごちそうの準備など、先生たちも生徒を喜ばせるべく一日中働いているからだ。余計な仕事を増やして夕ご飯が遅れるのだけは避けたいからだ。
魔法学校3年生のナールは成績優秀。杖の魔法だって自信がある。でも、1、2年生のお手本にならないといけない3年生なのでこの日ばかりは杖も箒ももう帰省の荷物と一緒にまとめてある。
それに、ナールはお母さんがマヌールなので魔法を使わないお掃除の仕方はお母さんから教わっている。手作業のお掃除もお手本となるべき生徒なのだった。
問題はもう一人の優等生のカルロだった。男子寮の汚れと言ったら女子寮とは比べ物にならない。食べ物のカスや、泥の塊など落ちていてはおかしいだろうと言うものまで寮の部屋中にあるうえに共用部分のリビングもとても汚れている。手作業で掃除などしていたら夕ご飯までに間に合わないかもしれない。
上級生が見ていないのをいいことに、カルロは杖を取り出して自分が使っている4人部屋を杖の魔法であっという間に綺麗にした。
共用部分のリビングも杖で綺麗にしようとした時、それをこっそり見ていた2年生の優等性のバロンが自分の住んでいる4人部屋を杖の魔法で綺麗にしようとした時悲劇は起きた。
杖の魔法が間違っていたのか魔法が弱かったのか、綺麗に埃を取ってから雑巾で拭くと言う作業をいっぺんにする魔法なので難しいのだ。バロンの部屋は濡れた埃が固まって部屋中にこびりつき掃除をする前よりも汚くなってしまった。
めそめそと泣いているバロンを同じ部屋の2年生がカルロの所まで連れて来た。カルロは自分が杖の魔法を使わなければこんな状況にはならなかったのだと反省し、バロンの部屋の掃除を手作業で手伝った。
ただし、その時には共用部分はカルロの魔法ですっかり綺麗になってはいたのだった。
このことはカルロとバロンとバロンの部屋の2年生の卒業するまでの秘密になった。
ナール カルロ 3年生
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