全てはここから始まった

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 同居のジジさん(私の実父)は昭和一桁のお人ゆえ。 後生大事にモノを溜め込む。 老人あるある、だろう。 例えば、賞味期限がとっくに切れたお菓子。 フタのついた容器、ガラス瓶(後で何かに使えると思うのだろう)。 ジャンクメールの類に入る生命保険の継続のお知らせ十数年分。 旅行会社の旅先案内冊子etc ダンボール箱に詰め込み、積み上げるのがウチのジジ流お片付けだった。 8年前の年明け間もない頃だと記憶している。 ジジが趣味の旅行に出かけ3泊ほど留守にした。 そういうときを見計らって私は時折、ジジの部屋に積まれたダンボール箱を 1~2個処分しておりました。 その程度なら、わからぬであろうと思って。 その日も下の方から箱を取り出し(土台部分なら箱も記憶から薄れていると思い)箱を開け、上っ面だけ見てジャンクと判断。 燃えるゴミの日に自治体のゴミ捨て場へ箱ごと持っていきポイ。 そんな事もすっかり忘れ、数か月経過。 夏を迎えたある日。 ジジ(私の実父)とババさん(私の実母)が2Fで大ゲンカを開始。 元々、仲のいい両親ではない。 ああ、また揉めとる、とため息をつきながら2Fへ。 事情を聞くと  「俺の部屋にあったお金がないんや!」 ブチ切れるババさん。  「私は知らん言うてるやろ!」 ちょっと落ち着こうや、ジジババさんよ。 どこにお金を置いていたのか、ジジに訊ねると  「ダンボールに入れて下の方に置いてたんじゃ」 なんちゅうところに保管しとるんだか… 半ば呆れた私は  「ほんで(訳:それで)いくら入れてたん?」  「大金や!2200万円入れてたんや!」 のけぞりそうになりましたとも。 あたくし、生を受けてからオバハンになるまでの人生で一度も見たこともない諭吉の枚数。 そんなお金を実父が持っていたこともそこで初めて知り、衝撃ではあった。 まさか自分がミッシング諭吉事件に関わっているとはその時点で夢にも思わぬ私。  「ジジ、そんな大金のへそくり普通銀行に預けるやろ」  「もう80も後半になってあちこち銀行へ行くんは面倒くさいから全部引き出して箱に入れて保管してたんや」 ジジが言うには昔勤めていた建築会社の社名が入ったA4封筒に小分けにしてお金を入れ、その上にどうでもいいようなジャンクメールを乗せていた、と。 ん? 待てよ…。 見覚えがある様な気が……  ピンボケ画像が徐々にハッキリしてくる、まさにそんな感じで貧しい私の海馬から数か月前の映像が引き出された。
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