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希望の光で輝いて見えた警察署
捨てられたという結果はジジからすれば、受け入れ難く信じたくないに違いない。
娘(私)が盗ったんじゃ!
お金はちゃんと存在している!
と、呪文のごとく言い聞かせ、脳に刷り込んでいるのだろう。
自分の脳を自分で騙すとはこういう事かも知れん。人は記憶や事実を塗り替えてそれを真実と思い込めるらしいから。
その夜、父ちゃんに事情を話した。
父ちゃんは衝撃のあまり、ひたすら「えらいこっちゃ(訳:大変なことや)」と呟くのみ。
4人の子供を育てるため残業も頑張る会社員の父ちゃんもまた金銭感覚が私と同レベル。
牛乳¥198なんて恐ろしい、見切り品で半額シール狙い、なければしゃーない(訳:仕方がない)から¥138の牛乳で手を打とう、とかコンビニで買い物なんてありえへん!コンビニはなんでも高いがな。
そういう人で私とマッチしている。
ゆえにミッシング諭吉が2200枚なんて、現実味がないはずで、えらいこっちゃくらいしか言葉が出てこなかったのもわかる気がする。
その夜、フラフラ、ヨロヨロと床についた私だが眠れるはずもなく。
私の脳内帝国の住人たちは、やらかしてしまった事の恐ろしさに顔面蒼白でバッタリ地に這いつくばり寝ゾンビ状態。
翌朝、パートの仕事にはちゃんと行った私。
よくあの状態で仕事をこなせたものだ。
自虐ネタで笑いを取れるなら話さずにはいられない大阪出身の私だが、この時ばかりはちょっと、聞いてーな!のノリでこの事を職場で話す軽さは持ち合わせてはおらなんだ。
どないしたらええねん?と頭の中でグルグルしながらも、能面の様な顔で私はマシーンだ!とター〇ネーターになりきって業務をこなしていた気がする。
仕事を終え車で警察へ直行。
パニクっている時の浅知恵だったのだが。
ゴミ処理場でお金が発見されているかも!
警察に届けられている可能性があるかも知れんっ!
そうや!
きっとそうに違いない!
と、K県のZ市警察署へ駆け込んだのであった。(在住していた管轄の警察署だから)
あの時の私には無機質な警察署の建物に光が差し、希望の光で輝いているような気がしたのだ。
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