とんでもないスタート

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「……で、いつだよ、引っ越し」 「うん。 ……本日ラストスクールデイなり」 「はぁ?!」 「引っ越しは明日早朝。 なんやかんや準備があったから学校にはもう連絡してあるけど、今日のホームルームで最後に発表してもらうことになってるの。 転校だー涙だーお別れだーとかの雰囲気がね、ちょっとそういうのって私、苦手だし」 おぉ……一応俺、彼氏なんだから何か記念になるようなものとか準備したかったのに……。 いやだって本日も普通に、放課後に部活がある。 新一年生も入って練習に熱が入るこの時期に『彼女の都合で今日はちょーっとお休みさせてもらいますっ』なんて言い出せない。 ……えぇえ、世間一般『彼氏』なら、彼女のためにそう言い切るべきなのか……? 「いいよー、気にしないで。 私があえて言わなかったんだからさ。 野球部をサボったりはしないでね?」 「――――――……っ」 「え、なに? ごめん、聞き取れなかった」 「あ、あいにーじゅー……そう、愛に自由……」 大した見送りも出来ないけどせめて、彼女が聞きたかったのであろうその小っ恥ずかしい愛の言葉を繰り返した。 慣れない台詞に首まで火照ってるけれど、彼女を見れば(おそらく俺もそうなんだろうけど)真っ赤になっていた。 「も~……もう! そういうところがイケメンなんだってば、このイガグリイケメン~!!」 彼女にはツボったようで、なぜだかバシバシとはたかれた。 傍から見たらイチャついてるように見えたかもしれないが、俺も彼女も不本意な別れに感情が追いついていなかった。 「いた、痛い、痛いって……」 「毎日RINE送りまくるからね! 絶対返事してよね! あわよくば週末にでも新幹線に飛び乗って会いにくるからね!」 「いや普通に電車で来いよ。 金が続かないぞ?」 「くゎ~っ、そこは私の愛の深さに震撼せんかー!」 「はいはい、ひかりの速さで会いに来い」 「おぉう……チッチキチー……」 「はい?」 「もう! そこは『こだま』、大木こだま・ひびき師匠に決まってるでしょうがー!」 俺にそのノリについて来い、と? ……無茶ぶりもいいところだ……。
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