とんでもないスタート

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翌朝、学校に行く前に彼女宅に寄ろうかと思ったが、もう引っ越し業者が作業を始めようかとしているところだった。 早すぎるだろ、まだ八時前なのに……! 何か一声かけたかったのに、それすらままならなかった。 公道の真ん中で愛を叫んでも仕方ない、というか俺の心臓が持たない。 後ろ髪を引かれながら学校に向かうことにした。 ちくしょう、登校中にスマホをいじる訳にもいかないし……! このタイミングではRINE一つ送ってやることも出来ない。 授業中も気がそぞろだった。 今頃車で東京に向かっているのかなとか、もう新居に着いた頃だろうかとか。 新しい学校ってどんな感じなのだろう。 彼女のことだからすぐに馴染むとは思うけど、だから世の中の男子は可愛い彼女を放っておくとは思えないのだが……! あぁあもう、イライラする。 部活の間だけは、彼女を忘れて野球に打ち込んだ。悶々が溜まっている時はやはり体を動かすのが一番効果的だ。 ヘトヘトになって帰宅後、急いでRINEを開く。 彼女からのメッセージがズラリと並んでいて、思わず顔がほころんだ。 『今から東京に向けて出発ー! おぉ慣れ親しんだ故郷よ、いざさぁらば~ さーらーばーせーんせーい いざさぁらば~ さーらーばーとーもよー♪』 ……何故歌う? 『今高速のSAで昼食ナリ、コロッケ美味しいナリ』 ……なんで某アニメが入ってくるんだよ? 『新居に着いたー! おぉお想像斜め上で綺麗ー! 街の感じも閑静な感じで良きかな良きかな、余は満足じゃ』 ……東京で閑静? どこだよ? 一人称が余ってなんなんだ……。 『そろそろ帰宅? お返事欲しいなーヽ(●´ε`●)ノホスィ』 ……言われるまでもないっての。 俺は迷わずRINE電話をかけた。ツーコールで彼女は出た。
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