とんでもないスタート

8/15
前へ
/25ページ
次へ
*** 一週間が過ぎた。 おかしい、おかしいのだ。 彼女とのやりとりは、最初は頻繁に交わされていたというのに。 土日を挟んだら、急に彼女からの連絡がパッタリと途絶えた。 違う、既読がつかないのだ。 電話をかけても繋がらない。 余りにも彼女から連絡が入らないので、月曜日の夜に母に聞いてみた。 渡辺一家宅の電話にかけてみようと思ったからだ。 「いや……いくらなんでもアンタ。 今時分、新居の電話番号ってこっちから聞ける? 個人情報が云々って時代なのに。 ただでさえ、歩実ちゃんのお父さん、有名人なんだから」 それはそうだ。 彼女がひっそりと引っ越ししたのも、お父さん絡みで騒がれたくなかったからだろう、ということはなんとなく分かっていた。 そこに家の電話が鳴り響く。 母が受話器を取った。 「はい、もしもし。 え、あらぁ、渡辺さん?! あら~お久しぶりです、どうですかそちらは」 このタイミングで、まさかの彼女の母親からの電話だったようだ。 俺は母に代わって代わってと必死でアピールするが、母はピシャリと俺をつっぱねて電話を続ける。 「え……いえ、こちらにはいらしてません。 ね、大和、アンタ歩実ちゃんと最近会ったりとか。 してないよね?」 ……え? どういう事だ……なんとも嫌な予感しかしない。 しばし彼女の母親と会話を交わした後で電話を切った母は、動揺しまくっている俺を見て言った。 「こないだの土曜日に近所に買い物に行ったきり―――歩実ちゃん、家に帰ってきてないんだって。 家に脅迫の類いの電話も入らないし、誘拐とかではなさそうなんだけど……ほら、お父さんの都合もあって、警察にはまだ届けてないって」 ―――彼女は、ある日忽然と。 消息を絶ってしまったのだ……!
/25ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加