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8月中旬、卵のことをすっかり忘れていた私は、夜の静岡県内に報道されたテレビのニュースを見て驚いた。
ニュースの内容は、富士宮市の朝霧自然公園で珍しい卵が発見されたというニュースだった。
この卵は新種の生き物の卵ではないかと報道され、テレビ画面に卵の動画が映し出されると私は心臓が止まるような思いをした。
テレビ画面に映し出された卵は、私が油絵の具で描いた卵だったからだ。
このニュースは、またたくまに全国版のテレビのニュースでも報道され、新聞やSNSでも大きな話題になっていった。
事が大きくなるにつれて私は自分が卵に色を塗ったということを言い出しにくくなり、心臓が凍るような思いが強くなっていった。
この卵は静岡県内の大学の研究機関に持ち込まれ、孵化させる試みが行われた。
私自身も何の卵なのか知らない状態だったため、この点については興味があった。
報道から1週間程した8月下旬のある日、発見された卵が孵ったというニュースがテレビで報道された。
卵から孵った鳥の雛の動画が映し出されたけれど、雛の姿を見ても私には鳥の種類が分からなかった。
報道ではホトトギスの雛だという話だった。
この報道でこのニュースは終わりかと思ったら、ホトトギスが産む卵について研究が続けられるという報道だった。
さすがに心が痛んだ私は両親に正直に話して、母が付き添って私は警察に行って全てを打ち明けた。
まだ16歳の女子高生だった私は、この件で罪に問われることはなかったけれど、16歳の女子高生が描いたアートの卵であることがテレビのニュースで報道された。
すると思わぬ反応が返ってきた。
私の描いた卵のアートがあまりにもリアルで多くの大人が騙されたということで、
『すばらしいアートだ!』
という称賛の意見もあれば、
『人を騙すのは良くない!』
という批判の意見もあった。
その後、私が16歳の女子高生だったということも大きく影響したと思うけれど、多くの大人を惑わせるような卵のアートを描いた私の画力が話題になっていった。
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