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アルヴィとの婚約
「おめでとう、リューディア」
学園の教室で、友人達が口々に祝いの言葉を贈ってくれた。
リューディア・ハーヴィストは15歳の伯爵令嬢。昨日、侯爵令息アルヴィ・クレーモラとの婚約が整ったばかりである。
「アルヴィ様は令嬢たちの憧れの的、その彼を射止めるなんてさすが学園一の才媛ね」
「射止めるなんて、やめてちょうだい。親同士が決めてきた婚約なんですもの」
リューディアはかすかに眉根を寄せて嫌がる素振りをみせているが、その頬はほんのりと赤くなっている。
アルヴィはクレーモラ侯爵家の次男であり、リューディアと結婚してハーヴィスト伯爵家に婿入りすることが決まっていた。
「あーあ、うるわしき金髪に透き通る青い瞳、貴族子息の中で一番の美青年と言われるアルヴィ様! できれば私と婚約してもらいたかったわあ」
「あら、あなたには無理よ。リューディアみたいに美しくなければね」
実際、リューディアの美しさは学園の女生徒の中でも群を抜いていた。つややかなコーラルピンクの髪は優雅なウエーブを描いて豊かに下ろされ、陶器のような肌には愛らしいえくぼが浮かんでいた。紫色の瞳は光の具合によって灰色にも見え、優しさの中にも意思の強さを感じさせる。
「で、彼はどんな方だったの? お会いしたんでしょう?」
皆の興味深々な顔に囲まれ、リューディアは照れながら話し始めた。
「ええ、とても優しい方だったわ。エスコートしていただいて、二人で侯爵家の庭を歩いたの。私が16歳になったら、夜会に連れて行って下さるって」
ほおっ、とうらやましそうなため息があちらこちらで聞こえる。学園の同級生の中で一番早く決まったのがこの婚約なのだ。
「……でもリューディア。あの子は大丈夫なの?」
誰かが言ったその言葉に、リューディアの表情が曇る。
「どうせ、『お姉さまばっかりずるい! 私にも!』って駄々こねているんでしょう」
あの子、というのはリューディアの一つ下の妹カイヤだ。優秀なリューディアとわがままなカイヤの姉妹は、学園でも有名だ。
「ええ、昨夜からずっと拗ねているの。今朝は朝食にも出てこなくて、結局学園も休んでいるわ」
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