アルヴィとの婚約

1/4
765人が本棚に入れています
本棚に追加
/61ページ

アルヴィとの婚約

「おめでとう、リューディア」  学園の教室で、友人達が口々に祝いの言葉を贈ってくれた。  リューディア・ハーヴィストは15歳の伯爵令嬢。昨日、侯爵令息アルヴィ・クレーモラとの婚約が整ったばかりである。 「アルヴィ様は令嬢たちの憧れの的、その彼を射止めるなんてさすが学園一の才媛ね」 「射止めるなんて、やめてちょうだい。親同士が決めてきた婚約なんですもの」  リューディアはかすかに眉根を寄せて嫌がる素振りをみせているが、その頬はほんのりと赤くなっている。  アルヴィはクレーモラ侯爵家の次男であり、リューディアと結婚してハーヴィスト伯爵家に婿入りすることが決まっていた。 「あーあ、うるわしき金髪に透き通る青い瞳、貴族子息の中で一番の美青年と言われるアルヴィ様! できれば私と婚約してもらいたかったわあ」 「あら、あなたには無理よ。リューディアみたいに美しくなければね」  実際、リューディアの美しさは学園の女生徒の中でも群を抜いていた。つややかなコーラルピンクの髪は優雅なウエーブを描いて豊かに下ろされ、陶器のような肌には愛らしいえくぼが浮かんでいた。紫色の瞳は光の具合によって灰色にも見え、優しさの中にも意思の強さを感じさせる。 「で、彼はどんな方だったの? お会いしたんでしょう?」  皆の興味深々な顔に囲まれ、リューディアは照れながら話し始めた。 「ええ、とても優しい方だったわ。エスコートしていただいて、二人で侯爵家の庭を歩いたの。私が16歳になったら、夜会に連れて行って下さるって」  ほおっ、とうらやましそうなため息があちらこちらで聞こえる。学園の同級生の中で一番早く決まったのがこの婚約なのだ。 「……でもリューディア。あの子は大丈夫なの?」  誰かが言ったその言葉に、リューディアの表情が曇る。 「どうせ、『お姉さまばっかりずるい! 私にも!』って駄々こねているんでしょう」  あの子、というのはリューディアの一つ下の妹カイヤだ。優秀なリューディアとわがままなカイヤの姉妹は、学園でも有名だ。 「ええ、昨夜からずっと拗ねているの。今朝は朝食にも出てこなくて、結局学園も休んでいるわ」  
/61ページ

最初のコメントを投稿しよう!