6人が本棚に入れています
本棚に追加
スベリア国に住む農家の息子、アエス。
農家一族のアエスは次男として生まれ育ち、跡取り息子である長男と違い悠々自適な生活をしていた。
日々、すくすくと育つ野菜たちを見守りつつ、天敵の動物に野菜を食い散らかせれないよう用心棒している。その大切な野菜を収穫したのち、村の栄えている広場で販売する毎日。大切な野菜を村の人々が買うことで生活の足しにしていた。
売り場担当のリオとスベリア国の田舎村で幸せな日々を過ごしていた。リオは魔族だけれども同性。たまに用心棒として村の散策しているアエスが見つけたのは寝ているリオだった。
少しお腹が膨れたのか、お腹をさすりながら雑草の中でスヤスヤとよだれを垂らしながら眠る魔族種の子供。
そんな無防備で可愛らしい寝顔の子供に胸の高鳴りを感じたアエス。これは動悸かと村の医者に相談したところ、一目惚れだと判明した。
それもそのはず、子供を勝手に持ち帰りしてきた上で医者に相談しに行ったのだから。
「全く、アエスは間が抜けたアホだ」と医者に呆れられた。
数時間後に魔族の子供がぱちり、と目を覚ました。もうその頃には、子供を抱えながらアエスは村の医者をあとにしている。子供を自分の家のベッドに寝かしつけていた時だった。
雑草の地べたで寝てから医者に立ち寄り、ふかふかとした場所で目が覚めるまで気付かなった子供。夕日が落ちて夕食の料理を作っているアエスの背後に移った。
「お、ま、え、だれだ」
後ろから声が聞こえるな、と振り向いたら、おぼつかない声を出して威嚇する魔族の子供がいた。
起きたのか、と安心する。
子供が発した魔族語は、野獣や魔族族と遭ってしまった際に理解できるよう独学で覚えた。微かに聞き取れる程度だけれども。
「俺の名はア、エ、ス。アエスだ」
魔族語でゆっくりと警戒されないように自分の体を指をさして伝えた。
すると言葉が通じたせいかなのか、目を大きくして「アエス」と言うリオ。
君の名は? って可愛らしい魔族に伝えたら『リオ』と答えた。
「リ、オね。了解、よ、ろ、し、く、ね」
リオの身長に合わせてひざを曲げると分かりやすく伝わるように言った。手を差し出されたことに対して、ビクッと体を怖がらせるリオ。
差し出された魔族の子供ことリオは、見ず知らずの人間族のアエスに拾われた。
リオと意志疎通が叶ったのも、若者で体格が良いという理由から村の散策を村人に言い伝えられたお陰。用心として魔族語は独学で勉強していて良かったとアエスはしみじみ嬉し涙をくんだ。
その一部始終を見ているリオは訳が分からずに頭を傾げた。
最初のコメントを投稿しよう!