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私はひとりぼっちの古いアパートで皺の寄った年老いた手を見つめた。
私にはもう誰も家族がいない。両親も10年前に他界し、今はこの古アパートに一人ぼっちだ。
あの日勇気を出して誰かに助けを求めれば子供と一緒に幸せに暮らせた未来があっただろうか?
毎日あの小さな温もりを抱きしめる事も、お母さんと笑って自分を呼んでくれることも。
幼稚園、小学校、中学校、高校、大学へと進み大人になっていくのを見届けることも。
彼女がいつか結婚して子供を産んで孫に囲まれて幸せな日々を送ることも。
そして毎年自分が作るケーキを食べ一緒に誕生日を祝うことも…。
「ごめんね。お母さんあなたを育てられなくて。でもどんなに離れてても、もう二度と会えなくても、あなたの幸せをいつも祈ってるよ。」
私は願いを込めてロウソクを消そうと息を吸い込んだ。
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