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すると玄関からチャイムの音が鳴った。こんな時間に誰だろうと玄関を開けると綺麗な女の人が立っていた。
「あの、如月美桜さんですか?私一ノ瀬桜子といいます。」
私は彼女の顔をまじまじと見つめた。
自分によく似た鼻と口…。
彼女が誰なのかすぐに悟り私の目は涙で霞んだ。
「こんな時間にすみません。実はあなたの事を調べてここまで来ました。私は31年前にあなたが産んだ娘です。」
私は涙が溢れるのを止める事が出来ず泣きながら31年ぶりに会う娘の手を握りしめた。
「…ありがとう…」
精一杯出した言葉はこれしかなかった。
ありがとう、生まれてきてくれて。
ありがとう、私の事を忘れないでいてくれて。
ありがとう、私をここまで探しにきてくれて。
そしてごめんなさい。あなたを手放してしまった事を。後悔しない日は一度も無かった。
私は涙を拭うと満面の笑顔で彼女を招き入れた。
「どうぞ中に入って。実はケーキを焼いてあるの。一緒にケーキを食べながらあなたの事を聞かせて。」
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