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 朝の目覚めは頻りに起こる布擦れの音と、慌てた様子の彼の声だった。 「えっ、ぇっ、えっ、……えっ」 (何だ? 朝から隣で落ち着かない……)  カーテンの隙間から入る日の光は、部屋の視界を程良く明らかにしていた。  仰向けで寝ていた目前に天井が映る。  隣を見ると先に起きていた彼が部屋を見渡しながら目を点にしていて、昨日の記憶を必死になって掻き集めているようだった。 「やあ。おはよう、山上くん」  呼びかけると、まるで漫画のような大袈裟なリアクションで彼がこちらを向いた。 「お、おはっ、え? おは……、おはようございます東條さん?」  語尾に疑問符は付けているものの、俺が東條和樹だということはギリギリ把握しているようだった。  枕に頭を乗せたまま一つ大きな欠伸を返してやる。  傍にある時計に目をやると、朝の七時過ぎを表示していた。 「早起きだね、山上くん。生活リズムの良さは大学生というのもあるのかな?」 「あ、あの、オレ、昨日その、……ここは、いったい」 「ここ? ここは俺の部屋だよ。酔い潰れたキミをそのまま連れ帰ってベッドに転がしたんだ。キミの住所を俺は知らないからね」 「と、東條さんの部屋……、それじゃ、あの。オレは昨日、そのまま」 「そう。まったく、酒に弱いなら弱いって教えてくれなきゃ。まあ、先に聞かなかった俺も悪いんだけど」  渇いた喉を潤わす為に水を飲みたくて体を起こした。 「えッ! な、わっ」  ベッドから下りようとしたところで、背後から上擦った声が聞こえた。  なんだ? と思って振り返ると、彼は更に驚きの声を上げて目を見開く。
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