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学校の掃除当番でゴミ捨てをする事になった。ゴミ捨て場は松多小学校の校舎裏にある。狭くて汚くて、田中春奈はこの場所が苦手だ。
「虫がいたらどうしよう……うぅ、早く遊びに行きたい。ジャンケンに負けちゃったから仕方ないかぁ」
春奈がゴミ捨てを完了させると、春奈の視界に変なものが映った。それは少し黄ばんでおり、それでいて丸みを帯びている。春奈はそれに近付き、手に取った。
「これ……たまご?」
すると、春奈の足元にサッカーボールが転がってきた。
「ごめん! そっちにボールとんでった」
声のする方を振り向くと、そこには春奈の好きなひとである大村海斗がいた。春奈が顔を赤くしながらぽうっと見つめていると、海斗は春奈の持っているものに釘付けなった。
「田中何持ってんの?」
「い、いやこれは……」
春奈がしどろもどろになっていると、海斗はひょいっとそれをもちあげる。海斗の眼はキラキラしていた。
「これドラゴンのたまごに違いねぇよ! だって俺マンガで見たし!」
「いや漫画って、それ物語の中の話でしょ?」
春奈が困惑しているのも構わず、海斗は大はしゃぎでぴょんぴょんと飛び跳ねる。そして春奈の手を握った。
「これ、二人で育てようぜ! 俺達の秘密な?」
突然手を握られた事に驚くのもつかの間、海斗は更にビックリさせる事を放り投げた。
ずっと海斗に片思いしていた春奈は、これから何かが始まるような予感がしていた。
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