君の隣り

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 君はかわいい。顔が可愛い。声が可愛い。身長が少し平均より低いのが可愛い。話しかけると少しだけ声が高くなるのも。テンションが上がると訛りが出ているのも。どんな話題でも共感してくれるのも。でも、君は知らない。僕が話しかけるときに心臓が押し潰されそうになっていることを。君の訛りを聞けると心の中で拳を握り天高く掲げていることを。君から話しかけてくれたときに平静を装いながら返事をしていたことを。裏で君のことを話していることを。  君に告白したい。でも、君に嫌われたくない。今の関係を壊したくない。マイナスの思考が身体中を駆け巡る。僕のことを何も思ってないだろう。何も思ってない人に告白なんかされたら気持ち悪いだろう。嫌だ。辛い。  でも、君は僕と会わない予定の日は服がダサい。香水は付けない。会う日は絶対お洒落なのに。香水は絶対付けてるのに。そんなことがあるせいで僕のことが好きなんじゃないかと感じる。  よし、決めた。次会うときに、告白しよう。  出来なかった。  これが毎回続いた。辛い。告白しようと思うと言葉が出てこない。別の語彙しか出てこない。その時に思いつく適当な話題を振ってしまう。  次第に、前までの態度と違っていった。会話の温度が低くなった。眼を見ても笑い方が前より社交辞令的になった。僕対して君は興味をなくしていったことに気付いた。今まで好意を持たれていたのだろう。それを態度が変わるまで気付かなかった。なんて馬鹿なんだ。  君と会う機会がなくなった。勇気が有ればこれからも会う機会があったかも知れない。勇気が有ればこの気持ちを一生持たずに済んだのに。君の彼氏になりたかった。  これで終わりにしよう。次に進むために。次こそは勇気を持とう。まだみぬ君の彼氏になるために。
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