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APDと診断されてから半年が経ち、新しい年を迎えようとしていた。街はコロナ禍による行動制限もなく、華やかな雰囲気を取り戻したようだ。私はそんな街中から家に帰る途中で、zoomを開いていた。
「私はAPDだと思うんですけど、耳鼻科に行ってもよく理解してもらえないみたいで…」
スマホの画面には何人かの当事者が映っている。そのうちの一人が悩みを吐き出したのだ。私は電車の中なので、アドバイスとか話とかはできそうにない。そもそも、アドバイスなんてできるような立場にもない。そんな中で、私はこう思った。
「自分は恵まれているのかもしれない」
待ちはしたけど、理解のある耳鼻科医に巡り会い、大学病院を紹介してもらって、診断まで受けている。すなわち、はっきりしたことが分かっているのだ。よく分からないモヤモヤ感からは脱している。
それと同時に、こんなことも思った。
「自分の経験を多くの人に伝えて、APDを広める手助けをしたい」
そのためには何ができるだろうか? そんなことを考えていると、APDこと聴覚情報処理障害を初めて知った時のことを思い出した。情報がネットやSNSからの情報ばかりで、書籍に手を伸ばすのは二の次だったような気がする。EさんのYouTubeに繋がったのもSNSの情報からだ。初めはYouTubeを始めようと思った。しかし、自分の顔を大勢に晒すのは恥ずかしいし、編集の仕方もよく分からない。そこで、自分のSNSから発信しようと思い立った。いかにも、現代っぽい感じなのだが、自分の性に合っている。そこから仲間を増やしてAPDについて広めていこう。SNSに自分の持っている特性のことを書き込みながら、終列車は家の最寄駅に近づいていく。
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