APDについて

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 四月、再び大学病院を訪れた私はある覚悟を持っていた。この日の検査は一日がかりのものだったので、かなり疲れると見込みを立てている。それでも今の状況を変えたい。その一念で私は今日に臨んだ。  朝の電車に乗ると、通勤や通学する乗客と共に大阪に向かった。何せ、私の住む田舎町からは大阪という土地が遠く感じられる。大阪環状線に接続する駅で降りると、繁華街のある駅まで向かう。駅の改札を出ると、高層ビルの真下に出る。田舎者の私は思わず空を見上げる。どこまでも高層ビルが壁となって聳え立っているようだ。  高層ビル街を歩いていくと、ある横断歩道を渡ってからは急に調剤薬局の数が多くなる。大学病院が近いからだろう。もうしばらく歩くと、一際大きな建物が見えてきた。大学病院だ。  前回とは違って、自動受付機に診察券を入れて受付を済ませると、そのまま耳鼻科のある二階へと昇っていく。耳鼻科の窓口で保険証を見せると、近くのベンチに腰掛けた。待ち時間というアディショナルタイムは前回に比べると短かった。文庫本まで持ってきて準備は万端だったのに、拍子抜けだ。  最初の検査は両耳分離検査と言って、両方の耳で同時に異なる言葉を聞き、両耳にバランスよく注意が向けられるかを調べられた。それ以降、音と音の間の無音の長さがどれだけあるかを確かめたり、雑音の下で聞き取りができるかを調べたりする検査を受けた。そして最後は、複数の音を左右で流し、どれか一つを選ぶ検査だった。そのほかにも心理検査という鬱などを調べる記入式検査を何枚も書き込んだ。  途中で昼休憩の時間があったので、病院の外へ出て、ショッピングモールに行った。特に目当てもなかったのだが、美味しそうなラーメン屋へ入ることにした。そこは濃厚な鶏白湯ラーメンが売りらしく、その店のおすすめするものを注文した。味がよく、あっという間に食べてしまった。後で、もう少し味わえばよかったと後悔。すぐさま、大学病院にとんぼ返りする。  大学病院での検査はここまでで、後は精神科病院での発達検査が残っている。疲労感に襲われながら、大学病院を後にした。  次回の大学病院の受診が七月なので、それまで期間が空く。結果を知るまでの間、私はAPDのことをしばし忘れていた。この耳の状態が正常で当たり前なのだと思い込む。そんな日々を送っていた。しかし、七月が近づくにつれ、APDの診断を受けることに期待する自分がいることに気がついた。何故そんなことを思うのか分からない。障害が増えるだけだろう。冷めた目でみる向きもある。それでも期待通りになってくれなければ困ると焦る自分の姿もはっきりと見えている。
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