#25. 忘年会の夜

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#25. 忘年会の夜

 ……これだけ人がいたら成田と顔を合わすことも、話す機会もないよね。良かった……! 2年に一度の同期全員参加の大規模な忘年会。 ホテルの宴会場を貸し切った会場に足を踏み入れ、私はそっと安堵の息を吐き出す。 立食パーティー形式の会場は大変な盛り上がりを見せている。 なにせ同期全員となると、約100名にもなり、大所帯なのだ。 これだけ人数がいれば、成田と接する機会は訪れずに成田の口から舞川さんのことを聞くこともないだろう。 この場には久々に会う同期も多い。 せっかくの機会だから、本社で顔を合わす私よりも他の人と話すようにするはずだ。 私たちの代はなかなかに結束力が強く、誰が言い出したのかこの忘年会が開催されるようになり、今年で3回目。 社会人2年目、4年目、そして6年目の今回だ。 6年目にもなると、仕事では各部署で重要な案件を担っていたり、キーパーソンになっていたりする。 プライベートの面では、20代後半になって結婚したり、子供が産まれたりしている同期も出てきていた。 必然的に、入社した頃とは会話の内容も変わってきているようだった。 昔はしきりに「誰々がカッコいい」と熱心だった同期が、今は「旦那が〜」「子供が〜」と話しているのを耳にすると月日の流れを感じずにはいられない。 そんな中、私は勤務地が本社以外の独身女子グループの輪の中にいた。 「菜月〜!あの”リッカでハロウィーン”の企画の担当だったんだって?すごい活躍じゃない!」 「そうそう!新聞の記事も見たよー!」 「今はどんなプロモーション計画立ててるの?」 数人の同期女子と私は仕事の話に興じる。 色んな部署に散らばって活躍する同期の話はとても面白いし勉強になる。 話をしながら、私は「この子のいる部署と連携すればいい企画出来そうだな」といったように仕事になる種を見つけたりしていた。 「菜月の今日のワンピース素敵だね!背が高い菜月に合ってると思う」 「ありがとう!この前、学生時代の友人の結婚式があってね、実はその時に慌てて買ったやつなの。全然服がなくて……!」 私が着ているのは、タイトシルエットのミモレ丈ワンピースドレスだ。 結婚式参列用に購入したものだが、ホテルでの忘年会だから馴染むだろうと今日着ていた。
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