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#18. 転職フェア
11月下旬の某日。
この日私は、人材ビジネスの会社が主催する転職フェアの会場にいた。
以前にカッシーから協力依頼をされていたやつだ。
大きなホール内には所狭しと企業ブースが出展されている。
転職を考えている求職者は、自由にこのブースを訪問することができる。
採用担当者や既存社員から詳しい仕事内容や社風などのリアルな情報を得られるとあって、毎回満足度の高い催しらしい。
新卒でリッカビールに入社した私にとっても他業界の会社は興味深く、転職するつもりはないけど時間があったら見て回りたいなと思わされた。
「今日は2人とも協力ありがとう。本当に助かるよ」
今回このフェアへの出展責任者をしているカッシーが私と成田へ声をかけてきた。
オフィスでたまに出会すことはあれど、成田とこうしてしっかり会うのも久しぶりだ。
「役に立てればいいんだけど。それにしても転職フェアってすごく盛況なんだね。企業ブースが多くてビックリした!」
「でしょ?色んな業界の企業が出展してるしね」
「なんか数年前に経験した就活を思い出すなぁ〜!懐かしい!」
「菜月の言うとおり、就活の時の合説みたいなもんだと思ってくれればいいよ。基本、対象が大学生から転職希望者に変わってるだけだから」
カッシーが改めてこの転職フェアについて簡単に説明をしてくれる。
私は就活の時の合説を記憶から引き出して、ふんふんと頷き話を聞いていた。
「……就活か。懐かしいな」
一緒にカッシーの話に耳を傾けていた成田がポツリと漏らす。
こんなふうに成田が過去のことを懐かしむなんて珍しい。
……なにか就活に思い出でもあるのかな?
どうせ成田のことだから、就活の時も要領良くやって早々と内定を決めたに違いない。
「晴人と菜月には、企業ブースにいてもらって、ブースに来た人の対応をお願いしたいんだ。普通に社員として普段感じてることを話してくれたらいいよ」
「了解!採用について詳細聞かれたらどうしたらいい?」
「それは俺の方に案内して。俺は具体的に採用に挑戦したい人に対して選考フローの説明や、簡易的なテストをしたりしてるから」
「分かった」
開始時間までの間、私たちは企業ブース内に会社パンフレットを並べたり、自社製品を陳列したり準備に着手した。
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