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 少し叱った口調で、少女は教えてくれた。どうしてなのか分からないけど、どうやら異世界へ転送されてしまったらしい。彼女はチェチェと名乗った。彼女曰く、ミロワールドと呼ばれるこの世界には人間がいない。姿は人間と全く同じでも、人間ではないと云う。そうなると、人間の定義は何だ? どう見ても同じじゃないか。  もう一つ気になる事を言っていた。デボンという恐ろしいヌシに支配され、住人は恐怖に慄き隠れ暮らしている。なぜなら、デボンは気に入った生き物をコレクションする。狙われれば心臓を抜き取られ、ただ生きているだけの心も、感情もない人形になってしまう。    スマートフォンの着信音が鳴った。慌てて取り出すと、美幸からだった。   「あ、繋がった! (ひびき)、私、もう駄目かも」 「え、どういう事? 今どこにいる?」 「あ、いや、きゃっ……ッッ……ッ」 「美幸! 美幸っ。どうした、答えてくれ、美幸!」    ズルズルと何かが擦れる音と、食い縛る様な彼女の息遣いが、スマートフォンの向こう側から聞こえてきた。   「——大好きだよ、響」ツー、ツー……。  まずいぞ。すぐに行かなければ。元の世界への戻り方を訊くために、チェチェのほうを振り向いた。彼女は震えていた。   「どうした、チェチェ?」 「ミユキが、ミユキがデボンに捕まった……」 「はあ? デボンってこの世界の生き物なんだろ? って言うか、なんで美幸を知ってんの?」 「ミユキとは、五日前にこの場所で出会ったの。ヒビキみたいに、偶然ミロワールドへ迷い込んだのだと思う。ミユキは凄く優しくて……デボンの恐怖から隠れ生きる生活が辛くて落ち込んでいた私を、ギュっと抱きしめてくれたの。私は、すぐにミユキの事が大好きになった」    美幸がこの世界にいるだって?   「ねぇ、ミユキを助けて! デボンから取り戻して!」 「当り前だ。僕の大切な人を助けない選択肢なんて、ない!」
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