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「響! 起きてる?」 「あ、うん。今起きた」  スマホから聞こえる柔らかな声は、幼馴染の櫻井(さくらい)美幸(みゆき)。朝が弱い僕のために、毎朝モーニングコールをくれる。と言っても、始めたのは先月からだ。大学の講義によく遅刻する話をしたことがきっかけで、美幸からの提案だった。    僕の名前は群雨(むらさめ)(ひびき)。この年に十九歳となった大学一年生だ。工業デザイナーを目指して日々学業に勤しんでいる。勉強以外でもちゃんと大学生活を満喫している。バイトだけで、交遊費だけでなく生活費だって自分で賄えるほどに稼げている。  恋愛面は、正直良く分からない。僕が美幸に好意を寄せているのは火を見るよりも明らかである。しかし、美幸が僕をどう思っているのか、未だに分からない。臆病だった幼少期の僕は、活発で気の強かった美幸のうしろによく隠れていた。思い返せば、姉弟みたいな感覚なのかなって思う節がしばしば有ったと思う。でも、いつからだろうか、美幸は大人の女性になり、僕はそれなりに男らしくなった。臆病な性格は残っているけど。  こうしてモーニングコールをくれるのも、子供の頃に世話を焼いてくれた名残りなのだろうか。美幸の「おはよう」と云う優しい声で起こされると、つい甘えてしまう。彼女の声を聞きながら眠りたい欲求が生まれ、二度寝してしまうのだ。結局、遅刻してしまう。情けない僕に呆れ愛想を尽かしたのか、五日前からモーニングコールをくれなくなった。
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