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雪だるま
吹っ飛ばされて起き上がらないサンタに、ニーナは歩み寄る。
「サンタさん、お仕事、おつかれさま」
ニーナは、お母さんがお父さんに言っている言葉を真似た。
夜、お仕事を終えて帰って来たお父さんは、お母さんのこの言葉で、少し元気になる――笑顔になる。
お父さんと同じように、疲れた様子のサンタさんに、ニーナは元気になって欲しかった。
しかし、サンタはまだ、雪を背に項垂れている。
「サンタさん、これ」
少しでも振り向いて欲しくて、ニーナはトナカイの言葉を思い出して「あるもの」を差し出した。自信作だ。
父の気を引くときと同じように。
ニーナは手に持った物をずいっとサンタの顔に近づけて見せた。
サンタは顔を上げた。
ニーナは小さな雪だるまを持っていた。
木の枝の腕と、小さな石がはめられた目。
そして、その雪だるまは小さなサンタ帽をかぶっていた。
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