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サンタクロースの誓い
「ありがとう」
サンタは、そっとニーナの頭を撫でた。
ニーナは、驚いて一瞬固まり、そして笑顔になった。
つられて、サンタも自然な笑顔を見せる。
サンタの細めた目から、潤んでいた瞳の涙が一筋流れた。
――忘れていた。
プレゼントを貰うことが、こんなに嬉しいことだったなんて。
先代のサンターー祖父から貰うプレゼントが嬉しかったこと。楽しみだったこと。
毎年クリスマスは、わくわくしてしょうがなかった。
「さっきは、大きな声を出して悪かった」
張り付けた笑顔ではない。自分らしい言葉で、サンタは伝えた。
「疲れてたんでしょ?」
ニーナはトナカイから聞いた言葉を使って、何でもないことのように言う。
サンタの手の雪だるまは、サンタの凍てついた心が溶けだしたのを感じたかのように、少しずつ溶け始めていた。
どうして、サンタになって初めて貰ったプレゼントが、雪だるまなのだろう。
溶けて――消えて、無くなってしまうじゃないか。
無性に寂しくなる。
「ニーナ、お母さんたちが起きる前に。そろそろ帰らないと」
「うん!」
ニーナは、随分とイツキに懐いているのか、駆け寄り、その背に再び乗った。
「またね! サンタさん」
ニーナは笑顔で手を振った。
サンタは、自分が幼かった頃、祖父のもとを離れる時のことを思い出した。
あの時の自分は、来年また、絶対に祖父のもとに遊びに来るんだ、と信じて疑わず、心配もしていなかった。
夢と希望に満ちた、幼い瞳。
サンタはニーナのそれに、かつての自分を重ね、ふっと笑う。
サンタはイツキに駆け寄り、ニーナの手を優しく握る。
「また来年。必ず、プレゼントを届けに行くよ」
ニーナは、うんと頷く。
二頭のトナカイも、笑顔で二人を見守っていた。
「だって俺は、来年も、再来年もずっと、サンタクロースだからな!」
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