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「おもしろいと思わないかい? 科学技術がどんなに進歩しても、人間の生活に関しては変わらないことの方が多いというのは。たとえばこのコーヒーだって、昔から受け継がれてきた文化だ」
テーブルを挟んで向かいに座るアンダーソン博士は、そう言ってかすかに不精ひげの見える口元へカップを運んだ。
「うん。とてもおいしいよ」
一口飲んで満足そうな笑みを浮かべる。ぼくはほめ言葉に笑顔をかえした。
「お口に合ってよかったです。たしかに言われてみれば、変わらないことの方が多いかもしれませんね。変化に気をとられがちですけど」
ラウンジにはぼくと博士の2人だけだ。ここのテーブルは無垢のオーク材で、そのあたたかい手触りがとても気に入っている。
それにこの部屋には大きな天窓がある。夕食後、他のスタッフはサッカーのワールドカップ中継を見るため、大型テレビのある娯楽室へ向かったけど、ぼくはラウンジで過ごすことにした。照明を落として、天窓から星空を眺めながら、ゆっくり食後のコーヒーを楽しもうと思ったのだ。そこへ博士がやってきたので、彼の分も淹れてふるまった。
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