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「これで、五人目ですよ」
職員会議にて。
集まった教師たちは頭を抱えていた、小学校教師として勤めて二十年以上になる私も例に漏れない。
「子供達の間では、“鳥になりたい症候群”なんて言われて噂になっとりますわ」
「そんなメルヘンなものじゃないでしょ。どう見ても神隠しなんだから」
「あ、はいすみません、大島先生」
能天気にのたまう教頭に釘をさす私。ちなみに大島雅恵というのが私の名前である。
鳥になりたい症候群。
その謎の病気?というよりも減少は、二カ月前に屋上から一人の少年が飛び降りたことを皮切りに始まった。
少年の名前は、美倉涼。六年二組に在籍する、クラスでも人気の高い生徒だった。スポーツが上手かったとかではなく、真面目でクラスの仕切り役や、面倒な仕事を積極的に引き受けるタイプだったため、クラスメート達から人望を集めていたという少年であったらしい。鳥になりたい。そう言って彼は、学校の屋上から自ら飛び降りたのだった。
彼は空中で、羽根となって消えてしまった。その現象を下で自殺を止めようとしていた教師たちも、多くの生徒達も目撃してしまっていた。そのせいで、“飛び降りた人間が羽根になって消えてしまう”という怪現象を、皆が嫌でも信じざるをえなかったのである。
無論、直接それを見ていない人間にとっては眉唾であっただろうし、見た人間でもまだ“何か見間違えたのでは”とか“マジックだったのでは”なんて言う人間もいた。正直、一度見ただけでは私もこの現象を信じ切ることができなかっただろう。
でも、事件はこれで終わりではなかった。むしろ始まりだったのだ。
それから一週間後に、さらにもう一人。今度は二年生の女の子が、同じように校舎の屋上から飛び降りたのである。そして、飛び降りた直後にまた羽根となって消えた。――彼女の自宅の机の上には、“鳥になりたい”という言葉が残っていたという。
「美倉君のことがあってから、屋上には鍵をかけたのに」
若い男性教師が、うんざりしたように言った。
「鍵かけただけで満足したのが問題だったのでは。……かけた鍵が、小学二年生の女の子の力で外せるほど老朽化してたんじゃ駄目でしょ」
「……ま、まさかドアノブごと外れるとは思ってなかったんだよ。仕方ないじゃないか」
彼の言葉に、しどろもどろになる校長。まったく、うちの学校の幹部ときたらこんなのばっかりか、と私はうんざりする。ドアノブが女の子の力で壊せるほど錆びて使い物にならない状態になっていた、と何で鍵をかけた時に気が付かないのか。
二人目の少女の名前は、二年一組の佐藤真凛。眼鏡をかけた、クラスでも目立たない大人しい女子だった。最初に飛び降りた美倉涼とは顔見知りでもなんでもなかったはずである。同じ通学班というわけでもなかった。
そして、この事件は三人目、四人目、五人目と続く。
三人目は四年三組の角松彬。元気で明るい、クラスのムードメーカー。小柄ですばしっこく、いつもかけっこで一番を取るような少年だった。
四人目は五年四組の藤田杏音。大人びた長身の少女で、彼女も一人目の美倉涼同様優等生タイプだった。
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