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あと一週間。僕は一ヶ月後の学内コンクールの結果を見ることはできない。お父さんやお母さんからも早く言えとは言われている。先生も僕のタイミングでいいと言ってくれてる。あとは勇気だけ。
それなのにまだ進めない。空を見上げる。それだけこの学校が楽しかったんだ。
入学したてでクラスメイトに話しかけられずに絵ばかり描いていた僕をぐいぐいとみんなの輪に入れてしまった寿には感謝してる。
太一は、いつも内容のない話をして笑わしてくれた。意味のないことがあんなに楽しいなんて。
裕二は絵ばかり描いている僕を引っ張ってドッジボールやバスケに誘った。息抜きも必要だろ? って。
みんな、良い奴だ。だから決心がつかない。
結局うだうだ悩んで、タイムリミットの二日前、僕はやっと決断した。
「やっぱり謙介が一番だよな!」
学内コンクールの前にみんなの描いた絵は先に教室に貼り出される。それが来週には廊下に貼り出され、生徒と教師の投票によって順位が決まる。
放課後に話があると寿と太一と裕二を呼び止めたが、なかなか打ち明けられない僕に気を遣ってか寿はそう切り出した。
「うん……」
「いつかさ、大人になって、このメンバーで集まったときさ、その時も謙介には絵を描いていて欲しいな!」
「うん……」
心がだんだんと臆してくる。これからの話なんて。
どうしても言い出せない僕を見る三人。窓から愛の鐘の音が響いてくる。
「謙介帰ろう。また明日もあるし。駄目なら明後日もあるし」
僕の心は決壊する。
「ないんだ! 明後日なんてないんだ! 僕は明日の夕方引っ越すんだ!」
「え?」
寿の目が丸くなる。太一も裕二も。
「明日引っ越すって学内コンクールどうすんだよ? あんなに綺麗に描いたのに?」
「僕は……結果を見れない……」
寿の拳が握られるのを僕は見る。ただその拳はすぐに開いた。
「なんで今日なんだ? もっと早く言えたんじゃないのかよ? 俺たちは友達じゃないのかよ? 大事な話もしてくれないのかよ?」
「ごめん……」
「嫌いだ……。謙介なんて嫌いだ!」
寿は叫んで教室を出ていく。太一と裕二は動かない。
「太一と裕二にもごめん」
「うん。驚いたけど、謙介にどうにかできる話でもないし」
太一は優しく慰めてくれる。
「寿はああ言ったけど、寿が謙介のことを嫌いな訳ないだろ?」
裕二の慰めが身に沁みる。
「ごめん……。本当にごめん……」
涙が次から次へと溢れてきてどうしようもなかった。あと一日でみんなともお別れ。大事なことを大事な友達に打ち明けることもできなかった悔しさが僕を支配した。
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