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時は元禄十五年十二月十三日の‥‥静まった夕方‥‥
江戸に在った吉良邸――その奥の間で、主人の上野介と某旧友が、卓を挟んで向かい合っていた。
上野介の前には、黒光りしているピストルがあった。
彼は満面の笑顔で、
『よく調達してくれたな。礼を言うぞ』
すると某旧友は、
『他ならぬお主の頼みだからな』
すると上野介は、三百両が乗った盆を取り出して某旧友の前に置き、
『さー、約束のモノだ。受け取ってくれ』
某旧友は笑顔で数回うなずき、手を出した。
上野介はピストルを手にし、
『恐らく赤穂の軍勢は、近々にも私の首を狙って、この屋敷に来るだろう』
某旧友は、小判を風呂敷ごと胸懐に仕舞った。
上野介は、某旧友を見ながら、
『その時に、この武器があれば、少しは何とかなるからな』
『しかし、本当に赤穂の者たちは、そんな大それた事をする気かな‥‥?』
『来る来る。なにせ向こうは、野蛮な田舎ザムライだからの‥‥』
『‥‥』
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