737人が本棚に入れています
本棚に追加
第7話 騎士の妻として
桃のフレーバーティーをカップの半分ほど飲んだ頃、ビルが隣に、そしてビルの母親がリーズの向かいに座った。
「落ち着いたみたいだね」
「すみません、ご迷惑をおかけして……」
「いいんだよ、身体は大丈夫そうかい?」
「はい、もうだいぶ落ち着きました」
「私はキャシーだよ、ビルの母親。もし困ったことがあったらいつでも来な」
「ありがとうございます。嬉しいです。なんとお礼を言っていいか……」
「いいんだよ、記憶、ないんだろ?」
そのキャシーの言葉に思わず黙ってしまう。
ビルも先程までやんちゃに動き回っていたが、心配そうに見つめておとなしくしている。
「もし思い出したとしても、思い出さなくても、この村はあんたを受け入れるように決めたんだ。二コラが頼み込んでくることは滅多ないからね」
「二コラはどんな人なんですか?」
ある日森に放り出されていた自分をどんな人間かもわからないのに、助けてくれた人。
だからこそ彼のことを知りたいし、役に立ちたいと思っていた。
リーズの中では彼が辺境を守る騎士としか情報がない。
「二コラはね、私たちをいつも助けてくれる立派な騎士様だよ。森からの獣退治だけでなく、村の運営も手伝ってくれている」
「騎士とはどういったお仕事なのですか?」
「私たちも詳しくはわからないが、二コラは王都からの使者でね、三年前にここにやってきたんだ。まだ若いのに一人で馬に乗ってやってきてね」
当時を思い出すように紅茶を一口飲んで、語る。
最初のコメントを投稿しよう!