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第20話 本当の俺を見て
リーズとニコラは再び辺境の地の家に戻ってきていた。
帰りの馬の上でも部屋に入っても、二人の間に会話はない──
口を開いたのはリーズだった。
「ニコラ……様」
「様はよしてほしい。今まで通りでいいよ」
「でも、まさか王子様だったなんて、知らなかったとは失礼いたしました」
「構わない、むしろかしこまられるとこまる」
リーズは二コラに近づくと、俯きながら自分の気持ちを言う。
「妻になるって話、たぶん正式には違うんですよね?」
「え?」
「正直初めは驚きましたが、だんだん一緒に過ごすにつれてあなたのその優しい部分や頼りがいのあるところに惹かれて好きになりました」
リーズはまっすぐニコラを見つめて自分の気持ちを伝える。
「王子様にはきっと立派な婚約者がいて、きっともうお別れなんですよね? お父様を裁いたことで、ニコラのお仕事は終わりですもんね」
「リーズ……」
「私は、私はあなたに恋を教えてもらいました。家族の温かい愛で支えてくれました。本当にありがとうございました」
リーズは深々とお礼を言って、そのまま部屋を後にしようとニコラに背を向けた。
「──っ!」
ドアノブに手を掛けた瞬間、強く後ろからリーズは抱きしめられた。
「行かないで」
リーズは縋るように呟く声がいつもの優しいニコラで思わず涙が出てくる。
(ニコラ……!)
自分に向けられた優しさも、家族として過ごしたこの生活ももう終わり。
彼とは別れなければならない。この手を振り払って行かなければならない。
でもどこへ……?
(私はどこに行けばいいの? ニコラを失って私はどこで何をすればいいの……? ニコラのいない生活なんてもう、私には……!)
刹那、リーズは強い力で振り向かされてそのまま唇を奪われた。
優しくて切なくて、でもあたたかい。
「リーズ、傍にいて」
「え?」
「俺にはリーズしかいない。離れるなんてできない。だから……」
「でも、ニコラは王子様で……」
「本当の俺を見て」
「──っ!!」
その瞳はまっすぐにリーズを見つめて、そして離さない。
「リーズ、改めて言います」
そう言うと、リーズの元に跪いて言う。
「第一王子ニコラ・ヴィオネは、神に誓ってリーズを愛しています。私の妻になってくれませんか?」
リーズの手の甲にちゅっと唇をつけられて誓われたその言葉に、思わずリーズの涙をこぼす。
そして、震えながら彼女は答えた。
「はい」
とびきりの笑顔で、こう言った──
「私もニコラが大好きです!!」
彼女は彼の胸に飛び込んだ──
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ここまで読んでくださり、ありがとうございました!
時間が出来た際は番外編や第二部なども「小説家になろう」にて投稿をしようかと思っております。
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