第1話 誕生日に捨てられた令嬢

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 しかし、いくら待てども迎えはやってこない。  その場にしゃがみ込んで長い髪でカーテンをするように自分の身体を包み込む。  だが、悲観しているわけではなくあくまで彼女はわからないという状況の中に身を置いていた。 (えっと、これは試練とかなのかしら? 伯爵令嬢は馬車で行ったらもしかして歩いて帰る慣例がある?)  とんちんかんな考えを巡らせるリーズだが、彼女に至ってはこれは本気で考えている。  なぜ、このような考えに彼女が至るのか──  そう、彼女には先月までの記憶がない。  つまり、令嬢としての振る舞いやおこないも全て忘れていた。  普通の生活に必要なある程度の記憶はあるのだが、家族のことはおろか自分が伯爵令嬢として生きてきた17年間の記憶がない。  彼女は以前のように令嬢として品ある行動の仕方がわからず、メイドに教えられたり、時には嘲笑われたりする日々。  そんな様子を見た彼女の父親は、リーズを用なしと判断してこの辺境の果てに彼女を【捨てた】のだ──
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