初めての推し

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初めての推し

 目の前に広がるのは前回よりも確実に増えたファンという名の観客。  「ソラ~!」「ソラく〜ん!」という黄色い歓声。観客よりも一段高くなった舞台に立ち眩しい照明とスポットライト。これを浴びるのが彼の仕事。ソラを呼んでる声ばかりに聞こえてしまうのは、俺がソラファンだからなんだろうなぁ。  そう、彼はデビューしたての3人組アイドルユニット『Natures』のメンバーの1人であるSORA。  そんな彼を見守る俺は単なる一般人の大学生、中嶋健太郎。東京大学ではなくて東京にある大学の理工学部に通う大学二年。    今まで推しとか無縁の生活してきたから、推しを応援する時の服装を調べてたどり着いたのがこれ。  白地に赤い文字で『SORA LOVE♡』と書いたハチマキを額に巻いて、目立ったもん勝ちのように金色のハッピを着てる。赤い文字にしたのはSORAのメンバーカラーが赤だから。  これが正装なのかと張り切って二度目のイベントに行ったら、周りはこんな服装の奴はいなくて、普通にお洒落した女の子だらけだった。  しくじったと思ったものの、この服装のおかげでイベント終わりの握手会でSORAに覚えてもらえたから、結果オーライって思い直して、それ以来ずっとこの服装でイベントに参加してる。  SORAファンというかNaturesファンからは名物ファンのように覚えられ、待ち合わせの目印にされたりすることもあったりね。  おかげで同じNaturesファンの友達は出来ないんだけど、SORAに覚えてもらっただけで十分だ。    
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