SORA

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SORA

 ずっと可愛いって言われ続けたかった。  可愛いって言われたい、可愛いねって頭を撫でられたい、好きな服を着てるそのままの姿を認められたい。その為なら頑張ってるダンスをもっと頑張る。今は自信がない歌だって------。  俺、森星空。どこで区切るんだって名前だけど、森が名字で星空が名前。星空って書いて『そら』って読むんだ。  キラキラネームって程じゃないけど、お年寄りなんかは初見で読めなくて、今どきの若い子の名前は読めないね〜なんて言われる。  オーディションの時に俺の名前を気に入ったプロデューサーが、星空と書いてソラ、うん、芸名はそのままでいこう!ってなったから、この名前のまま一応芸能人やってる。芸能人っていうかアイドル。アイドルの中でもまだまだひよこか卵かってくらいの。  俺が産まれた森家では、俺の前に男子が二人生まれていた。俺の兄ちゃんズだ。今度こそは女の子がいいねって話してた両親は、産まれるまでは性別を聞かずに、産まれた俺が男の子でガッカリ。それでも、俺の顔がその辺の女の子よりずっと可愛いって言って、女物の服を着せ続けた。  そうして育てれた俺は周りからも近所の人からも「可愛い星空ちゃん」って声をかけられることが多く。可愛いの褒め言葉に有頂天になってた。俺は可愛い。  変わったのは小学生中学年くらいになってから、親は俺が自分からみんなと同じ男らしい服が着たいって言い出すのを待ってたらしい。その時には男物を着せようねって。  でも俺は同級生になんと言われようと、似合ってるし着慣れてるからこれがいいと言って、頑として譲らなかった。   両親は焦って、女物の服を全て捨て、兄ちゃんズのお下がりを着せるようになった。  なんでだよ?ずっと『可愛い星空ちゃん』て褒めてくれてたのに。なんで今まで着てたような可愛いワンピースやフリルやリボンと離れなきゃならないんだよ。    
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