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可愛い服たちを捨てられて、服着ないわけにいかないから兄ちゃんズのお下がりを着てた俺の目についたのは、お祭りの時に踊ってたダンスグループだった。
色とりどりの可愛い衣装を着て踊る、俺よりは年上の人達。ここに入れば可愛い服着られんじゃん?安易な動機でダンスを始めた。
入ったものの、練習練習でなかなか可愛い服は着られない。やっとのことで大会になり、俺に渡されたのはパンツスーツだった。想像と違うじゃん!
がっかりしてダンスレッスンを休みがちになり、テレビを観るようになった。今度はテレビの歌番組で華やかな衣装を着て歌って踊るアイドルが目についた。これじゃね?!
そうして母親に頼み込んで、習ってたダンスを武器に事務所のオーディションを受け合格したってわけ。
俺の所属している事務所は、男ばっかのアイドル事務所で、デビューの前に練習生の時期がある。
練習所にはたまに現れるおっさんがいた。そのおっさんの目に止まった俺たち三人Natures(ダサっ)。三人並んでる所がバランスが良いなと言われ、おっさんに名前を聞かれた。
俺、星空。それから海斗と莉玖。
おっさんは俺たちの名前も気に入ったらしい。
「oh、空に海に陸。君たちはNaturesだ!うん、いい。我ながらナイスなネーミングだ」
後から知ったんだけど、その怪しい英語混じりで喋るおっさんは社長だったらしい。俺たち三人は社長にNaturesと名付けられ、練習生時代からそのグループ名を与えられていた。それでもデビュー出来るかどうかは決まってなかったけどな。
歌やダンス、表情作りのレッスンをしたり、先輩たちのバックで踊る日々。
なかなかデビューの話は来なかった。
でも俺は、もうここしか可愛い服着るチャンスがねぇんだよと思い込んで、必死にレッスンを頑張った。
両親はといえば、俺がレッスンに夢中だから、可愛い服のことはすっかり忘れたんだなと安堵してたと思う。残念ながら俺の頭の中はソレばっかりだったんだけどな。
可愛い可愛い言って育てたのは父さん母さんじゃん。近所の人達も親戚もみんな。あの心地よさがまた欲しいんだよ。
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