SORA

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 そしていよいよデビューが決まった。  メンバーは俺と海斗と莉玖のNatures。グループ名そのままいくんだってさ。ださっ。練習生時代からのファンにも定着してるだろって、ださっ。メンバーカラーも赤、青、黄色って信号機かよ!  まぁ可愛い俺様が基本センターだから見た目的には良いと思う。Naturesは169センチ可愛い系の俺。  他の二人は身長178センチ甘いマスクで優しい性格の海斗、細マッチョみたいな爽やか短髪の似合う莉玖。うん、バランスはいいんじゃね?  デビューイベントは宣伝の効果もあって、なかなかに出だし好調。俺を呼ぶ声も結構聞こえた。  で、二度目のイベント、その男性ファンは現れた。  大人というにはまだ子供っぽく、大学生くらいかなと思えた。大学生で男子が来るのはまぁ別にいるにはいるけど、驚いたのは、その男がアイドルの俺らよりも整った顔立ちをしていたのと、その端正な顔立ちを消し去るかのようなインパクトある格好をしてたことだ。  ぱっちりくっきりした目鼻立ちに長い睫毛、ふにゃっと笑ってるように見える唇はリップだけだろうにツヤツヤだ。その上、高身長に小さな顔、サラサラの髪は脱色したことないような感じに艶やかだった。。  なのに勿体ないことに、額のハチマキには『SORA LOVE♡』ってデカデカと赤文字で書いてあるし、金色のハッピを着ている。これはあれだ、残念なイケメンだ。  残念イケメンがメンバー二人に「がんばってください」だけ伝えてこちらに来た。 SORA LOVE♡って書いてあるからには俺のファンだろ?何話すんだろうって楽しみだった。意識はずっと残念イケメンの方で、ファンには「ありがとー」ってにこやかに言ってバイバイするを流れ作業の如くこなしてた。  次来る、次だ。 「ソラくん!俺前回のイベント通りかかってスゴく感動したんだ!応援する!頑張って!すごく可愛いね!びっくりしたよ!これアイドル応援する時の正装かと思ったら違うんだね!絶対また来るから!俺の名前中嶋健太郎!またね!」  両手を握りしめられたままぶんぶん上下に振られ頭まで動いてしまいクラクラするなか中嶋健太郎は嵐のように去っていった。    金色ハッピの残念イケメン中嶋健太郎ね、覚えちゃったよ。あいつ可愛いって、俺の事すごく可愛いって。ふふふふふ、いい奴じゃん。  それからは残りのファンと何を話したのか覚えてない。俺の脳内には中嶋健太郎が俺に「すごく可愛いね!」って言った言葉が繰り返し繰り返し流れてたんだ。
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