SORA

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 んで、次のイベント。  忘れもしない中嶋健太郎は、前回と同じ痛々しい金色ハッピ姿とハチマキをして現れたのだ。  もしかしたらこの格好で俺が覚えてるかも…って可能性にかけたのかもしれない。  しかし浮いてる。オシャレな格好の女の子が多く来てくれてる中、果てしなく浮いてる……。  パフォーマンスをして握手会といういつもの流れ。まだデビューしたてだから、固定ファンを多く獲得するためにも、しばらくはこういった流れのイベントが続くようだ。  お洒落してる女の子たちは正直みんな普通に可愛いな程度で記憶に残らず通りすぎてく。申し訳ないけど。何回も来てくれてたら多分そのうち覚えるだろうし、覚えたい気持ちはある。    そしてやってきた、インパクト大の残念イケメン中嶋健太郎。 「ソラくん!」  既に友達かのように親しげに話しかけてくる声と表情。までは良いんだけど、金のハッピが目に痛い。  アイドルって言っても俺たちNaturesのデビュー衣装は黒を基調とした中にメンバーカラーを少しすつ取り入れてあるお洒落な感じの衣装だから、黒い服のアイドルが並んで待つ中にキンキラの中嶋健太郎が来ると、アイドルの俺たちより目立ってる気がする。  多分他の二人も「なんだあのオタク…」って思ってそうだ。  今日も両手で俺の手を握りしめてきた中嶋健太郎。 「あぁ、ケンタロだったよね。また来てくれたんだ、ありがとう」  他のファンに接する時と同じようなにっこり糸目のアイドルスマイルで対応する。 「覚えてくれてたんだ!うわっ、感激だよ。しかも健太郎じゃなくてあだ名でケンタロ?!すご……。ソラくんはアイドルの鏡みたいな人なんだね。他のアイドルは知らないけど。今日もすっごいすっごい頑張ってて、かかか、可愛かった!他の人も汗かいて一生懸命だけど、ソラくんがカッコよくて可愛くて!また来るね!ありがとう!」  並んでる間に考えたんだろう健太郎は辿々しくも猛烈な勢いで喋って去っていった。  俺はと言えば、ありがとうと声をかけて手を振るのみ。ふぅん、今日も可愛いって言ってってくれた。もっと落ち着いた『可愛い』の言葉と頭撫でてくんないかな。  一人の年上だろうイケメンファンからの可愛いの言葉がやけに気に入った俺は、また健太郎に会えないかな、もっと長い時間会えるイベントないかな、健太郎が俺に飽きないようにもっともっと可愛いを磨かなくちゃと考えてた。
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