SORA

5/5
前へ
/38ページ
次へ
 次のイベントもその次のイベントも変わらず健太郎は同じ格好で現れて、メンバーにも一部のファンにも顔を覚えられたようだった。俺も毎回「ケンタロ」と呼ぶようになり、メンバーも『強烈なソラファン』として健太郎の事を認識していた。 「お疲れ〜、ソラ、今日もあの強烈ソラファン来てたな。あの格好素でやってるんだか、覚えられたくてやってるんだか、とにかく凄いな」  からかってるんだか褒めてるんだか分からないけど健太郎の話題を出してきた莉玖。爽やか体育会系な莉玖だから、からかってるわけではなさそうかな。 「だね、今んとこ二回目から毎回来てくれてる。なんかアイドルオタクやるの初めてらしいよ。何着ていこうって調べて、ちょっと間違ったとこ見たらしいね。でも俺が格好で覚えたと思って毎回着てきてるっぽい」 「まじか。あれだね、ヲタ芸とかする辺り調べちゃったんだね。それでも毎回あれで来るの勇気あるよな〜。ソラ愛だな。俺らより断然イケメンだからビジュアルでも覚えてるのに、その辺自覚ないのかね〜」 「だよね。圧倒的にビジュアル良いのに本人自覚なさそうなとこが堪んないよね」 「おっ、ソラ。ちょっと気に入ってる感じなのか〜?まぁ、男のファンは貴重だから有り難いよな」 「そうだね」と笑顔で返しつつ、結構本気で気に入ってることに気づいた。  そうなんだよな〜、健太郎来ると必ず俺の事可愛い可愛い褒めてくれるいい奴なんだ〜。俺ってチョロいな〜、『可愛い』が欲しかったから、それを与えてくれる、しかもイケメンが来るの愉しみにしてる。  女子のファンは一応『カッコイイソラくん』て認識が多いんだか、ファンレターにもそう書いてある。俺が男だから気を使ってそう言うのかな?  俺はとにかく『可愛い』が欲しいのに。  楽屋で鏡を見ながらメイクを拭き取りつつ、可愛い赤リンゴの髪留めは似合ってるからこのまま付けて帰るかと、そのままにして帰路についた。
/38ページ

最初のコメントを投稿しよう!

34人が本棚に入れています
本棚に追加