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曲中にファンサをもらう度、握手をして笑いかけてもらう度、一緒に写真を撮って近くで話せば話すほど好きになっていった。
ファンサなんて言葉つい最近まで知らなったのに、新しい世界を知ったのも楽しかった。
他メンの男性ファンとも仲良く話せるようになった。みんなそれぞれ自分の推しの良いところを銘々に話してるだけだったけど、その空間が楽しかった。同じグループを推してる仲間意識かな。
握手会があった日は、手を洗いたくなかったけれど、洗ってない不潔な手では次にソラくんと会った時に申し訳ないから、泣く泣く清潔にした。洗ってもまた握手してもらう機会はあるだろうし、君との思い出は流れていかない。
もっと知りたい君の事。ステージの上だけでなくもっともっと。こんなに自分が一人の人間にのめり込むなんて思いもしなかった。
ネットに乗ってる情報だけじゃもの足りなくなって、イベント終わりのソラくんが帰る姿を見守りたいと思うようになった。アイドルの仮面を脱ぎ捨てたソラくんの意外な一面が見られるかもしれない。
そうは思うものの、大抵車で帰っていくので後ろから一緒に帰れる機会はなかなか訪れなかった。それでも、そんな日が来るかもしれないと思って毎回イベント終わりのソラくんをひたすら待つ日々を過ごした。
そうしたら、ある日徒歩で帰るソラくんの姿を見たんだ。
あっ、今日のイベントはもしかしたらソラくんの家の近くだったのかもしれない。出待ちのファンに挨拶して帰っていく。
今日こそ家が分かる。目的は後ろから見守る事はだったのに、住んでる場所がわかるかもしれないと思うと、高揚感が半端なかった。
違った彼を見たいだけだったのに、住んでる所が分かるかもしれない喜びに打ち震えた。
手汗が出てきて、心臓が脈うつのが聞こえる。変に足音を殺そうとしてる自分がいる。
偶然を装って話しかけたい衝動に負けないように、一定の距離をとって、跡をつけた。
だって俺は一ファンだから。
プライベート時に馴れ馴れしく話しかけるのはきっと違う。そっと見守るのが正しい距離なんだ。
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