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自国であるルーディアム国の宮殿に戻ると、サンクチュアリにあるソファに王子服を投げる。
「ああ! もう疲れました! 王子というのはなんて礼儀の知らない方なんでしょうか」
「まあ~キャロル! おかえりなさい。もしかしてまた隣国のトラウド国に行っていたの?」
「ええ、今日は第一王子のフィル王子に会いましたが、それはもう失礼なお方でした!」
「ふふ」
ノエルは口元に手を当てて、上品に笑う。
「何がおかしいのですか、母上」
「ううん、なんだかキャロルちゃんがそこまで感情的になったのっていつぶりかしらって」
(確かにそうだ……いつぶりだろうか、もう何年も王子を演じることに夢中で感情を殺していた気がする)
「きっと良いお友達になりそうね」
「よしてください、友達にはなれません」
「え?! まさか、恋人になっちゃったの?!!!」
「違います!!!」
顔を赤くして子供っぽく否定するリオと、楽しそうにからかう母親ノエル。
しばらく親子の談話は続いた。
リオとの談話を終えて自室に戻ったノエルは執務室の机の引き出しから一通の手紙を出していた。
それを神妙な面持ちで見つめて呟く。
「これだけは守らないといけない」
誰もいない部屋に静かにノエルの声が響いた──
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