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「きゃっ!」
リオが視線を向けると、押し倒したのはフィルだった。
「フィル王子?!」
「ふん、あれだけ怒って帰ったのにまた来たか」
「秘密を守っているのか気になるので」
リオは冷静に対処しようとするが、心臓は今にも飛び出そうなくらい緊張していた。
「好きなところにいろといったのに、自室にいるとはな」
「勝手に上がり込んでしまったことは大変申し訳なく…きゃっ!」
フィルはリオの首元に自分の顔をうずめて唇をつける。
突然の出来事にリオは抵抗することもできず、顔を赤くすることしかできない。
「男を甘く見るな」
「え?」
「こんな男の自室に何度もほいほいと来て、襲ってくださいと言っているようなものだ」
「そんなつもりでは」
「お前がそうでも男はそう思わない」
そういうとフィルはさっと身体を起こしてリオを解放する。
するとリオはまだ顔を赤らめながら、謝った。
「申し訳ございません、私と二人きりで会うというが嫌だったのですね」
「は……?」
「だから、こんなわざと怖がらせるようなことをして自室に来させないようにしたと。配慮が足りませんでした。今度からはサロンでお会いするようにいたします」
思わぬ返答をされたフィルは目を丸くしてリオを見る。
そして、耐え切れなくなったのか口元に手を当てて笑い出した。
「く、ははははは!」
「フィル王子?」
「お前はおもしろいことを言う。俺の負けだ、別に襲わないから毎日自室に来て監視していいぞ」
(あ、初めて楽しそうに笑う姿をみた……)
リオはフィルのあどけないような笑顔を見て、彼を可愛らしいと思ってしまった。
(いかん、いかん! フィル王子はいつ秘密を漏らすかわからない! 監視なんだから! そう、これは言わば契約お友達ね、うん)
リオは再び秘密警護を徹底することを心に誓った──
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