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第5話 素直になれない気持ち
リオの自室には多くの華の香しい匂いが漂っており、大きな壺には大きな流木や木、そして大きめの花が立てかけられている。
そしてテーブルには比較的小さめの花が並べられており、その花のうちの一つであるローズピンクの花を一つ手に取ると、茎の部分を水につけてハサミで切った。
パチンと鳴り響く以外に音は全くせず、リオの表情も真剣そのものである。
切った花を剣山に刺すと、少し手前に傾けるようにしてバランスをとる。
「できた」
そうして出来上がった作品をあらゆる角度から眺めて、満足そうに一つ頷くとリオはそれを自室の本棚の横にあるテーブルに飾った。
飾り終わった後でリオはベッドに座り込むと、はあと一つ大きなため息を吐いて考え込む。
(そろそろいつもならフィル王子のところに行く時間だけど、なんか行く気になれない)
リオの心はもやもやとして晴れず、先日のことばかり考えていた。
(なんであんな……あんな押し倒すようなことをしたの? 女なら誰でもああいうことするの?)
いやいやと顔を振って自分の考えを否定すると、自分の中で結論を立ててみる。
「違うわっ! 二人が嫌だったのよ。自室で二人になるのが」
思わず口に出てしまう言葉に自分自身でもう一度納得させるように、腕を組んでうんうんと頷いてみせる。
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