第5話 素直になれない気持ち

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『男を甘く見るな』  途端に、銀色の髪が艶めいて自分を見下ろしながら言葉を発するフィルの言葉に心臓がドキリと跳ね上がってリオの顔は思わず赤くなる。  自分自身の顔に両手を当てて目を潤ませてきょろきょろとさせるリオは、そのままベッドにある枕に突っ伏した。 「私が恋なんてするはずないじゃないっ!」  枕の中にある羽毛に消えていったその嘆きは、その次に呟く言葉も打ち消した。 「だって、恋なんて女の子としてできる立場じゃないもん。私は国を背負っていく身。決められた男の人と結婚して、公の場では女性と結婚したことになる」  リオは自分の運命を理解し、そしてそれを全うしようとしているがゆえに自分の中に芽生えた恋心かもしれない感情に蓋をすることにした。  そうして、考え込むうちに1日、また1日と過ぎていき、トラウド国の王から食事の誘いがあるまでフィルのもとに行くことはなかった。
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