第1話 隣国の王子様に女だとバレてしまいました

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「暑いな……さすがに」 「お疲れ様でございました」 「ああ、そして式典衣装は重い……」  そうやってメイドに服を脱がせてもらうリオは、かなり汗ばんでいる。 「今日もよかったわよ~! キャロル~♪ もうママ、キャロルがかっこよすぎて卒倒しちゃいそうだったわ~!」 「母上、着替え中に入ってこないで下さい!」 「いいじゃない! 親子なんだし!!」 「それに、女の名で呼ばないでください、私には『リオ』という名があります。母上もいくら宮殿の中の最奥部のサンクチュアリだからといって、『王』の口調から戻さないでください!」  この王族はかなり特殊で、何百年も前に女しか生まれない呪いをかけられた王族だった。  ゆえに、生まれた女児はみな最初から「王子」として育てられ、やがて「王」になる。  呪いのことを知るのはごく少数のみであり、王族は基本女であることがばれないように「サンクチュアリ」と呼ばれる区画で過ごす。  つまり、この国の「王」も「王子」も女としての名前と女であるという秘密を抱えて生きている。 「ああ、そうそう。リオにどうしてもお願いしたいことがあるの」 「なんですか?」 「ほら、リオももう17歳でしょ? ちょっと公務を手伝ってほしいのよ」 「それはもちろんです。何をいたしましょうか」 「隣国の外交担当」 「え?」  リオは着替える手が止まって嫌そうな顔をする。 「あそこの王は確か……」 「ええ、女好きで遊び人のあの王よ」 「はぁ……」  リオの母親であり王であるノエルが、ため息をつく彼女の肩を叩く。 「まあ、気をつけてれば大丈夫よ」 「……善処します」  ノエルはそういってルンルン気分で自室へと向かって行った。 (苦手だな……あの王……)
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