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「暑いな……さすがに」
「お疲れ様でございました」
「ああ、そして式典衣装は重い……」
そうやってメイドに服を脱がせてもらうリオは、かなり汗ばんでいる。
「今日もよかったわよ~! キャロル~♪ もうママ、キャロルがかっこよすぎて卒倒しちゃいそうだったわ~!」
「母上、着替え中に入ってこないで下さい!」
「いいじゃない! 親子なんだし!!」
「それに、女の名で呼ばないでください、私には『リオ』という名があります。母上もいくら宮殿の中の最奥部のサンクチュアリだからといって、『王』の口調から戻さないでください!」
この王族はかなり特殊で、何百年も前に女しか生まれない呪いをかけられた王族だった。
ゆえに、生まれた女児はみな最初から「王子」として育てられ、やがて「王」になる。
呪いのことを知るのはごく少数のみであり、王族は基本女であることがばれないように「サンクチュアリ」と呼ばれる区画で過ごす。
つまり、この国の「王」も「王子」も女としての名前と女であるという秘密を抱えて生きている。
「ああ、そうそう。リオにどうしてもお願いしたいことがあるの」
「なんですか?」
「ほら、リオももう17歳でしょ? ちょっと公務を手伝ってほしいのよ」
「それはもちろんです。何をいたしましょうか」
「隣国の外交担当」
「え?」
リオは着替える手が止まって嫌そうな顔をする。
「あそこの王は確か……」
「ええ、女好きで遊び人のあの王よ」
「はぁ……」
リオの母親であり王であるノエルが、ため息をつく彼女の肩を叩く。
「まあ、気をつけてれば大丈夫よ」
「……善処します」
ノエルはそういってルンルン気分で自室へと向かって行った。
(苦手だな……あの王……)
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