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第6話 1週間ぶりの溺愛
腕を強く引っ張られてリオはそのままある部屋へと引き込まれたあと、気づくと何か温かいものに包まれていた。
状況を確認しようとするが、真っ暗な部屋であるがゆえに何も見えない。
そんな中、リオの上から聞き覚えのある声が降ってきた。
「なぜ俺のもとに来なくなった?」
リオはその声の主に抱き留められていると気づいたと同時に、その声がいつも自分が訪れていた人の声だと気づいた。
「フィル王子っ!」
「なぜ、来なかった?」
「そ、それは……」
まさか自分があなたに恋をしてしまったからかもしれないと気づいたからです、とは言えずに口ごもる。
すると、それまでのフィルからは想像もできないような言葉が返ってきた。
「会いたかった」
「え?」
それはまるで迷子になった子供が母親と再会して会えた時のような、はたまた遠距離恋愛のカップルが半年ぶりに会えた時のような、そんな縋りつくような安心したような声だった。
フィルの手はさらにリオを強く抱きしめ、そしてその首元にゆっくりと顔を落とす。
「フィル王子? 何かあったのですか?」
リオがそう問うてもフィルは黙って首元に顔をうずめてじっとしている。
そして愛おしそうに髪を優しくなでると、そのままリオの頭をなでて唇をつけた。
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