第6話 1週間ぶりの溺愛

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「フィル王子?!」 「ああ、会いたかった。来なかった時の日々、俺がどれだけ辛かったかわかるか?」 「え?」 「お前に会えない日々が何より暗く、何より重く、楽しくなかった」  まるで付き合っている恋人に告げるような甘い言葉を囁くフィルの声に、リオは段々顔が赤くなっていく。 (そんなこと本気で思ってくれてるの? やめて、そんなこと言われたら勘違いする)  リオは何か言おうとするも自分自身の素直な気持ちを言うわけにもいかず、黙って俯く。 「秘密をバラしていないのか見張るのは一体どうした?」 「それはっ! フィル王子なら言わない気がして……」  フィルはその言葉を聞いてふとリオの身体を自分から離して両肩に手を置くと、そのまま目を見つめて諭すように言った。 「男は平気で裏切る生き物だ」  そう言って今度は目を逸らし、本棚を見つめるフィル。  リオはフィルの何かを考え込んだような、あるいは何か特定のことを指しているようなそんな棘のある言葉に返答する。 「あなたも裏切るの?」  裏切るわけがない、と心の中で思いながらもリオは疑問を口にした。 「さぁ、どうだろうな」  静かな部屋でぼそっと呟いて消えていった言葉はなんとも物悲しく、リオは声をかけることができなかった。  すると、フィルはそんなリオの様子を見て一息吐くと、言葉を紡ぐ。 「今日は華でも生けるか」 「え?」 「食事も早めに終わったんだし、少しぐらい時間あるだろう? 一つ生けていけ」 「え、ええ」 (まさか、私が華を生けるのが好きなのを知って? そんな、まさかね?)  リオはうぬぼれそうになる自分を振り払うように首を振ると、部屋の入口にあった壺と花々のほうに向かった。
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