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第7話 二国合同剣技演習
「剣技の二国合同演習ですか?」
「そうよ、ルーディアム国とトラウド国で友好のために剣技演習を開きましょうという話を持ちかけられてね」
ルーディアム国のサンクチュアリの一角、サロンでアフタヌーンティーをしながら話すリオとノエルは今週おこなわれる剣技演習について話をしていた。
「で、もしかして」
「ええ、キャロルちゃんにその演習に出てほしいのよ♪」
はあと一息吐くと、キャロルことリオは紅茶を一口飲んで心を落ち着かせる。
「確かに私はこの国で最も剣技に優れているとは思いますが、王子が自ら出て良いものでしょうか?」
「それは大丈夫よ、向こうも王子が出るらしいから」
「え? それってまさか」
「ええ、フィル王子よ」
その名前にドキリとするも、母親の手前平静を装ってまた一口紅茶を飲む。
「わかりやすいわね、キャロルちゃんって」
「え?」
「なんでもないわ」
少し含みを帯びた言葉をなんともない表情で呟くと、ノエルはケーキをフォークで口に運ぶ。
「わかりました、剣を磨き準備しておきましょう」
「助かるわ~♪ 当日は私も見に行くから頑張ってね!」
「ええ、相手が誰であろうと剣で負けはしません」
そう言って席を立つと、そのままサンクチュアリにある自室へと戻っていった。
「相変わらず、負けん気が強いんだから。誰に似たのかしらね? あなた」
王子の親として表舞台に現れることのない自分の夫に向けて呟かれたノエルの言葉は、誰もいないサロンに消えていった。
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