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二国合同演習の日、リオは準備を終えて闘技場の廊下部分に向かう。
リオは自分の対決を全て圧勝で進め、ついに決勝戦まで突き進んでいた。
もちろん相手はトラウド国王子フィルであり、両国間の第一王子の決闘ともあって観客は益々盛り上がっている。
闘技場の廊下部分を進み、会場の入り口手前まで歩いていくと、そこには壁にもたれかかって腕を組みながら目をつぶるフィルがいた。
リオはそんな余裕綽綽なフィルに声をかける。
「フィル王子、剣では私負けませんから」
「ふん」
そう言いながら二人は会場へ入っていった。
会場へ入り、二人は剣を構えると、審判の合図によって一気に間合いを詰めた。
「──っ!」
先手を打ったのはリオだった。
リオはその俊敏な足を生かしてフィルのもとに一気に距離を詰めると、そのまま脇腹を狙って剣を刺した。
それを避けずに、自らの剣で受け止めるとその力を受け流してするりと身を翻してカウンターを繰り出す。
会場の観客席では東にルーディアム国、西にトラウド国の王族、そしてその下に民衆と座って観戦していた。
ルーディアム国の陣営では、ノエルがじっとその闘いを見つめていた。
「ノエル様、いつになく楽しそうですね」
「ああ、あの子の剣技を見るのは久々だからな。それにこの剣技は圧倒的にリオが有利だ」
いつもサンクチュアリで話す口調とはまるで違い、その身は王を見事に体現している。
「やはり国随一の剣の使い手であるリオ様が有利ですよね」
側近がさすが、と声をあげながら自国の王子を称えるがノエルは違った。
「いや、フィル王子は噂によると双剣使いだから、剣一本で闘うこの勝負はフィル王子のほうが不利だ」
「では、リオ王子の勝ちですね!」
「いや、リオはこの勝負、負ける」
「え?」
それ以降ノエルは言葉を発することなく静かに闘いの行く末を見守っていた。
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