339人が本棚に入れています
本棚に追加
/45ページ
「美味しいですね、この紅茶。これはもしかしてトラウド国の北方の特産を使ったベリーの紅茶でしょうか?」
「え? あ、ああ。その通りだと思いますが、よくご存じですね」
「父より幼い頃から地理、歴史、外交のことを特に教えられました。トラウド国のことはまだ勉強中ではありますが、大変良い土地だと思っております」
フィルはリオの博識ぶり、真面目で勤勉な様子を目の当たりにして性別など関係なく同じ立場の人間として尊敬した。
「リオ王子は、どうしてそんな風に勉強されるのですか?」
「私は次期国王になる者ではあるが、絶対ではない。そして、国王になったとして国民を幸せに導かねばならない。そのためにはあらゆる知識を吸収しなければならないのです。ですから、私は本を読んで人から話を聞き、いつか来るその時までに知識という武器を身につけます」
フィルは驚き、言葉が出なかった。
自分と同じ年頃の子がここまで国を思って行動できるということに、尊敬をした。
そして、それを語る顔は窓から入る太陽の光でキラキラと輝き、まるで女神のように見えた。
フィルはそんなリオを見て顔を赤らめたが、バレないようにそっと顔に手を当てて逸らす。
「大丈夫ですか、フィル王子」
「あ、ああ。大丈夫だ」
フィルの心の中で小さな恋の芽が現れた。
最初のコメントを投稿しよう!