339人が本棚に入れています
本棚に追加
/45ページ
「どうだ、リオ王子は」
帰国したルーディアム国王とリオを見送ったあと、謁見の間ではトラウド国王とフィルが互いの交流報告をしていた。
その中でリオの話題が出たのだが、フィルは自分の気持ちを隠すようになるべく無表情で国王に話す。
「良い方だと思います」
自分でも無難に答えたな、と思ったが国王は予想外の返しをしてきた。
「お前がもう少し成長した時、リオ王子……いやリオ姫を誘惑しろ」
「え? お父様、気づいて……」
「当たり前だ、私がおなごの変装に気づかぬわけがない。あの母親もいつか私のものにしてやる」
下卑た笑いを見せる国王を見て、フィルは伏し目がちに首にかけたサファイアのネックレスを握り締めた。
(お母様……)
フィルの母はフィルが幼い頃に亡くなっていた。
その母の形見であったネックレスをフィルは大事にいつも身につけている。
愛しい母も、この父親のもとではもう昔の人なのだと思い、悔しさと一種の侮蔑の心が生まれた。
「いいな? 成長していずれあの母娘はまた来る。絶対にモノにしろ」
「かしこまりました」
表面上は父に従う素振りをして、フィルは心の中で思った。
(絶対にリオ王子を、あの子を守ってみせる)
そうして、フィルはリオを守る術を身につけるべく、様々な教育に身を捧げていくことになる。
最初のコメントを投稿しよう!