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第9話 十一年越しの想い
リオは姿見の前で自分の洋服を眺めていた。
(王子の格好でなければ、他の令嬢たちのような綺麗なドレスを着てお出かけできるのに)
姿見に映るのは凛々しい王子の格好の自分。
年相応の令嬢たちはドレスを着て社交界に行くのに、自分は王子としてしか参加できない。
そんな思いにはもう決別したはずなのに、どうしてかまたそんな気持ちがわいてくる。
(きっとフィル王子と関わってしまったからね)
フィルに密かに想いを寄せるリオは、その想いすら伝えられない現状に嘆き苦しんでいた。
(私はどうして、王子として生きなければならないの?)
そんな思いに苦しむように、床にしゃがみ込んで自分自身を包むように抱きしめてみるも、なんとも虚しさだけがそこにあった。
「いつかは忘れるわよね、この想いも」
そう呟いて、リオはいつも通りトラウド国のフィルのもとへと向かった。
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