最高の1日

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 その瞬間、凍えていた身体の芯の部分がほのかに温かくなるのを感じた。    どうやら僕は、気付いていなかったようだ。突然幸運が舞い込み、一気に気分が上がり、大喜びする。僕はそんな幸せを思い描いていた。もちろん、そんな幸せもあるだろう。だが多くの幸せは、実は誰の周りにも転がっていて、ふとした瞬間にそれに気付く事で感じる事ができるのかもしれない。    今まで暗い人生を送ってきたと思っていたが、ただ単に僕自身が幸せに気付けなかっただけなのだ。神様は何度も良いトスを上げてくれていたのに、ネガティブ街道まっしぐらだった僕は、ことごとくそのトスを無視し、自ら幸せになるチャンスを逃していた。きっと業を煮やした神様が、占い師に化けて無理やり分からせてくれたのだろう。何気ない幸せに気付くという幸せを与えてくれたのだ。     「ここは寒いし、今から一緒にメシでも食いに行かないか?懐かしい話もしたいし」   「喜んで」      暗い水面に別れを告げ、僕達は歩き出した。悪くない最高の1日だった。いや、今日はまだ終わっていない。僕達の歩く道を、車のヘッドライトが明るく照らしていた。
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