赤い手袋

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赤い手袋

 私は公園のベンチに座りため息をついた。  バレー部の朝練はもう始まっている。しかし、立ち上がる気持ちにはなれない。もう一度ため息をつき、手のひらを見た。  私はいつも赤い手袋をしている。でも、今は少し荒れた手が見えるだけだ。昨日、私は手袋を学校のどこかに置き忘れてしまったのだ。 「悪いことって重なるんだな…」  つぶやきながら空を見る。今にも雨が降ってきそうなどんよりとした空だ。空に合わせて周りの家までが灰色に見える。  灰色、白と黒が混ざった色。今の私のようだと思う。白にも黒にもなれないどっちつかずで、本当の自分の色がわからない。 ―調子よく人に合わせているよね。  昨日、言われた言葉が心にこびりついて離れない。  努力していたのに、と思う。努力していたのにどうして、みんな私のことを認めてくれないんだろうと。  そんなことを考えていると、声が聴こえてきた。 「立花?」  その声の方を見ると幼馴染の翼が立っていた。  
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